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整体からかみ合わせを考える
歯はあごの骨に直接くっついているわけではない?
歯の土台にあたる部分は「歯槽骨(しそうこつ)」という骨ですが、歯は歯槽骨に直接一体化しているわけではなく、この歯槽骨と歯の間には、クッションのような役割をする「歯根膜」という膜があります。


この歯根膜には多くの神経がきており、センサーのような役割を果たします。歯に不自然な力がかかったりすることで歯の当たる位置が変わり、これまでと違った力がかかったりすると、歯が動き出してしまいます。
また、歯科治療を受けて誤った治療をされて、歯を完全に固定されてしまったりすると、歯は、その細かな自己調整の動きがきかなくなってしまい、噛み合わせが悪いままで維持されてしまうことになります。インプラントや矯正治療のトラブルの多くに、このようなことが原因になっていることも少なくありません。
歯は関節のひとつとして微細な動きで自己調整する?
かみ合わせは、歯の1本1本が細かく動き、噛み合わせが調整できる仕組みになっています。歯は、縦にかかる力には強いですが、横からかかる力や、ねじるような力には弱い特徴があります。縦にかかる力には、50kgの力にも耐えられます。しかし横からの力には、20gの力で移動をはじめます。(矯正治療で歯が動くのはこのため)


かみ合わせの重要性とは?
歯根膜はクッションのような役割をしているだけでなく、神経がきており「センサー」のような役割もしています。歯根膜の感知する様々な情報は、神経によって脳に伝えられ、脳から内臓の働きを調整する指令、ホルモンなどの内分泌系の指令、さらに首や肩などに伝達されます。
良いかみ合わせの場合
良いかみ合わせは、良い刺激で脳を活性化させたり、自律神経などを安定させます。良いかみ合わせによって、免疫アップにもつながっていきます。
悪いかみ合わせの場合
悪いかみ合わせは、肩こり、腰痛だけでなく、精神的にも元気が出ない、イライラする、集中力が低下するなどにつながってくることもあります。
歯並びとかみ合わせ?
歯並びとかみ合わせは、似てるようで実は違ったものです。
・歯並び ・・・ 歯がきれいに並んでいるかどうかの見た目。
・かみ合わせ ・・・ 歯の1本1本、そして全体ではどのようにかみ合わさっているか。
つまり、歯並びが悪いからといって、かみ合わせが悪いとは限りませんし、また、歯並びが良いからといって、かみ合わせも良いとは限らないということなのです。
噛み合わせの悪さは顔のゆがみに現れてくることもあります。左右の目の開き具合が違う、片側の頬がぷっくりしている、頬が垂れ下がっている、口角が曲がっているといった顔のゆがみは、かみ合わせの問題から来ていることが少なくありません。


いつも同じ側でものを噛むといった「噛み癖」があると、口腔内の筋肉にねじれや凝り、つれなどが生じます。右ばかりで噛む癖があると、右の頬の筋肉が緊張してねじれ、頬骨が出っ張ります。頬筋に左右差があると、引っ張られて直接繋がる咽頭にも左右差が生じることにつながることがあります。また、睡眠中の歯ぎしりや頬杖の習慣、寝る時いつも同じ側で横向きの姿勢になる、合わない枕を使っているといった生活習慣によってもかみ合わせはずれてくることがあります。
かみ合わせの役割 ~ 重力に対してバランスを取る?
噛み合わせの役割として、地球の重力に対して身体のバランスを整える役割もあります。
二足歩行をするヒトは、顎、肩、骨盤、足裏が、いずれも地面に対して水平で、身体の中心軸に対して左右対称となっている時、最も安定して立つことができます。ただ、成人の頭の重さは、6kg平均もあり、これを頸椎で支えています。
この頭部を乗せている顎のラインが、身体の中心軸に対して垂直でなければ、重心がずれ、身体全体にゆがみが生じることもあります。
姿勢の悪さは、噛み合わせのずれとつながっています。猫背だと、頭の重心は前に行き、仙骨は後ろに傾きます。頸椎や骨盤に不自然な負荷がかかり、口の周りだけでなく、全身の筋肉が過緊張を起こします。

顎を突き出すと、自然と口が開いてしまいます。これの状態は口のトラブルを誘発します。常に口が開いていると、口の中が渇き、細菌が繁殖します。
唾液は、抗菌・殺菌の浄化作用もあり、また、歯のエナメル質にカルシウムやリンが沈着する「再石灰化」を助けていますが、常に口が開いていると、それらの機能は弱くなってしまいます。

そしてその重力の影響を受けている地球上で、動物も人間も「最良の姿勢はどのような姿勢か?」というと、重力に対し、最小限の力で立っている姿勢なのです。
全身のバランスの中での調和
アングロサクソン系の人と日本人との歯の骨格の違いは?
アングロサクソン系の人々と日本人とでは、大きな違いあります。歯の骨格がまるで違うのです。
・アングロサクソン系 ⇒ あごのアーチの幅が横に狭くシャープ。
・日本人 ⇒ あごのアーチは横に広い。
このような違いから、アングロサクソン系は、がっちりと噛み合いますが、日本人は噛み合い方が浅い傾向にあります。

歯の長さも違います。日本人の歯の方が歯の根が短く、歯の表面を覆っているエナメル質も薄い特徴です。
もともと狩猟民族で肉食傾向が強かった歴史をもつ人々と、農耕民族で穀物をすりつぶすのに適した歯の構造を持っていた人々とではこのような違いが出ています。
歯の根が短く、エナメル質も薄いデリケートな歯の日本人に、欧米のような削る量の多い治療を施したら、神経が出やすくなってしまいます。また、歯の根が短いということは、歯周病になったらそれだけ歯を失いやすい傾向があるということになります。
身体は様々なパーツが相互に連動し合っている?
身体は様々なパーツが相互に連動し合っており、身体のどこかをいじったら、直接的であったり、間接的であったり、いずれにせよその影響が出ることがあります。安易に歯を削ったり抜いたりして治療するのは、その場限りの対症療法にすぎない可能性があります。
実際、他の歯科で歯だけを診て治療され、全身に辛い症状を抱え込んでいる患者さんも少なくありません。

また、女性は出産直後などにも身体のバランスが大きく変わることがあります。これを整えないまま骨格である歯牙を削ってしまうと、身体が元のバランスに戻った時、噛み合わせの問題がよりひどく発現する場合があるため、注意が必要です。
噛み合わせの調整や歯列矯正のために歯を削ったり抜いたりする時、それが身体のどこにどんな反応を起こすのかもわからずにやるのは、リスクも含んでいます。ただ単に歯をきれいに並べることは、必ずしも噛み合わせが良い状態になるとはいえないのです。