噛む刺激と脳

噛む刺激が脳を活性化?

噛む刺激は脳を活性化させることがわかっており、近年、口腔内の運動は、脳の感覚野、運動野のおよそ4分の1を占めることもわかってきました。

よく噛むことは、非脳に刺激が届いて、リラックスした状態を示す「α波」が出ることがわかっています。

子供の脳の成長にも咀嚼が関与?

赤ちゃんは、お腹の中にいる時は、自分の指を吸っていますから、生まれてすぐに吸い付いて母乳を飲むことが出来ます。これは口輪筋、口を動かす最初の運動となります。赤ちゃんは何でも口の中に入れて、なめたりしゃぶったりしますが、それで物の触感を知り、舌や頬筋を動かし咀嚼を体得していきます。

噛む力がつく過程で脳が急速に発達して、2歳~3歳までに、大人の80%程度まで達するのです。

咀嚼運動のリズムはセロトニン神経に働きかけ、子供の情動を安定させます。情動を安定させるセロトニン神経は、呼吸と密接なつながりがあり、呼吸が深くゆったりと出来る時、セロトニン神経が活性化します。

幼児期は、成長の上で基礎となるものを身につけなければならない時期ですので、乳歯列に異常があり、上下の顎の位置関係に問題があると、顔の骨格や筋肉に影響が出て、本来あるべき顔と全く違う顔になってしまうばかりか、身体の成長にも大きく影響することがあります。

噛むことと生命

噛むことに遅すぎるということは無い?

お年を召された方や、様々な理由で、歯を何本か失っている方、不便な入れ歯を我慢して使っている方なども、決して諦めないで下さい。咀嚼は足とも密接な関係があり、足から身体を立て直し、咀嚼力を回復させたケースも少なくありません。

いくつになっても、ご自身の力で噛むことには意味があり、唾液腺のひとつである耳下腺から、「若返りホルモン」とも呼ばれるホルモンが分泌されます。

これは骨や歯を丈夫にしたり、筋肉を引き締めたり、皮膚や髪の毛の入れ替わりを促進することがわかっています。また、よく噛むことで、咀嚼筋、表情筋が鍛えられ、表情が若々しくなってくることもあります。

口腔ケアの重要性?

近年、口腔ケアと全身の健康について注目されるようになってきました。

養護老人ホームでの死亡率を調べた結果、口腔ケアを受けている人は、肺炎になっても治る確率が非常に高く、誤嚥性肺炎になる確率が下がることもわかっています。

また、口腔ケアを受けている人はインフルエンザになる率が低いというデータもあります。

人間の喉は、身体が起きた状態で機能するように作られているので、横になったままではうまく嚥下が出来ませんし、高齢者になると増える誤嚥は、口から喉にかけての舌の動きが鈍ることが大きな原因のひとつです。

 

また、入れ歯を入れると水が飲めるようになるという報告もあります。

口の周りの筋肉の緊張を取ることと、口腔機能を良好に働かせるために歯列を整えておくことは、非常に大切です。

年を取り体力が落ちると、抵抗力が弱り、口腔内に細菌が繁殖しやすくなります。

  • 歯が悪くなる ⇒ ものが噛めなくなる。
  • 口を動かさなくなる ⇒ 口腔内の筋肉が衰える。
  • よく噛めなくなる ⇒ 内臓機能が衰える。
  • 脳への刺激が乏しくなる ⇒ 認知症のリスクが上がる

このような悪循環に陥ってしまうこともあります。

よく噛み・よく歩く=笑顔につながる?

噛み合わせ、身体のバランスが回復してくると、表情が生きいきとてきて、その人本来の美しさも蘇ってきます。

その人が不具合を感じているトラブルに対して、その人の身体に合ったベストな状態に調整していくことが大切です。

  • 口腔ケアを日頃から心がける。
  • よく噛む。
  • よく歩く。

このことが、治療で調整した噛み合わせを安定させることにつながります。

「噛むこ」は「生きるこ」であり、生命の活力の源であるといえます。