目次
筋膜リレーション
筋膜リレーションとは?
身体のバランスを取る要は顎にあり、身体の土台は足にあります。実はこの顎と足は密接に連動し合っています。
バランスの良い身体は、重心がきちんと身体の真ん中を通っている状態です。重力線に対して、身体の正中線が真っ直ぐに重なり、均等にバランス良く両足に負荷をかけられる時、「身体のアラインメントが整っている」という状態で、人は重力に対して最小限の力で立つことができます。

しかし、重心が身体の真ん中を通っている人はほとんどいません。長年の経験から言うと、私たちは左側にねじれやすい傾向があります。右側を良く使う生活習慣も関係しますが、人体の根元的な性質なのかもしれません。そして、咬合トラブルを抱える人の多くは、右側の過緊張がもとで、左にねじれて症状が出ている傾向にあります。
なぜこのようなことが起きるのかというと、人が2足歩行という非常に高度な動きをすることにあります。

歩く時には、足には体重の3倍程度の負荷がかかり、体重が60キロの人なら、1歩で180キロもの重量がかかっています。
足は歩いたり走ったりするたびに大きな衝撃を受けるため、足の多くの骨が組み合わさって、立体的なアーチが作られています。
このアーチのバランスが崩れると、ちょうど地震の時に建物の揺れが上に行けば行くほど大きくなるように、腰、肩、首、そして噛み合わせに大きな影響が出ます。足裏のバランスが、身体の上部に直接影響を与えるというのも、実は人間の筋肉のつき方に起因しています。
人体は常に重力の影響を受けバランスを取ってますが、前後のバランスが難しいものです。
人は、足裏から始まり、ふくらはぎ、背筋、後頭筋を通って、目の上部まで繋がる背面の「起立筋」が非常に発達しているという特徴があります。
人体を支える筋肉のリレーションは足裏から始まり、足先で終わり、その接合点は顎となっています。この筋肉の連動性を、筋膜リレーションといいます。


骨格を支え、滑らかに動かすのが筋肉の役目で、筋肉は細い筋線維が束になったもので、それらをまとめて覆っているのが筋膜です。筋膜があるおかげで、筋肉同士がくっつくことなく、複雑に連動して動くことができます。
筋膜は、足の裏の足底腱膜から、ふくらはぎ、腱、脊柱、首、頭頂部をまわり、眼窩の上まで繋がっています。
筋膜の持つ重要な性質とは?

筋膜はたすきをかけるように斜めにも繋がっていて、横の動きやねじれにも対応できるようになっています。このため、ロボットではできないスムーズで柔軟な動きができるのです。
足裏から始まった筋膜は前方ではお腹、後方では肩の部分で対角線状に首へ繋がっています。よく、足裏のツボの反射で、左足は右上半身のそれぞれに、右足は左上半身のそれぞれに対応しているのをなぜだろうと不思議に思っていた方も多いと思います。
それは、この筋膜が対角線状にリレーションしている人体構造によるものなのです。
筋膜がたすきがけに繋がっていることからくる対角線の法則は、実は口の中にもあります。口腔も口腔粘膜という、1枚の膜で覆われているからです。噛み合わせが良くなくて、顎位のトラブルを起こしている人がほとんどが当たっている所の反対側に問題点があります。
例えば、左の奥歯の当たりが強い人の場合、実は右側に左に押してねじる噛み合わせの問題があるのです。だからまず、右側の問題を解決する必要があります。
日常生活でベストなバランスを持続する
かみ合わせと全身への調和?
噛み合わせは、寝た状態を基準にしてはいけません。治療で噛み合わせを調整した後、少し周辺を歩いてもらうようにしています。きちんと身体に馴染んでいるかどうかを確認するためです。歯を削る、高さを出すといった歯科治療を行う時でも、普通に生活している体の状態の中でベストな当たりはどこかを考え、筋肉の触診をしたり歯の動きを見たりして調整していきます。
立った時に、噛み合わせがずれていたり、立ち方がおかしかったりしないかチェックします。そして、足踏みをしてもらい、うまくできなかったり、ぎこちなかったり、左右の足の上がり方が違ったりした場合は、再度調整していきます。
いくら寝た状態でバランスが整っていても、身体を起こして立った時に、姿勢、噛み方、坐り方、歩き方など生活習慣上の悪い癖があれば、すぐにまたゆがみが生じてしまいます。特に噛み合わせは、1度取ったバランスを定着させるまでに、少し時間がかかります。

足は第2の心臓?よく歩くことが大切

「老化は足から始まる」とよく言われますが、最も個人差が大きいのが足の筋力です。つまずきやすいのは筋力低下、つっかかるのは左右の脚長差、すり足は膝関節症の可能性が高いでしょう。
足の筋肉運動には、全身のバランスを取って立ったり動いたりする他に、第2の心臓と言われ、血液の循環を助けるという大切な役割があります。心臓から送り出された血液は、2つのルートに分かれ、1つは肺へ、もう1つは脳から足先まで、動脈・静脈という経路をたどって再び心臓に戻ってきます。ところが重力の影響により、人体の1番低い位置にある足には血液が溜まりやすいのです。
心臓から最も遠い場所にあるため、極めて細い毛細血管までは、心臓のポンプだけではうまく血液を循環できないのです。
これを解決してくれるのは、足の筋肉運動に他なりません。筋肉が収縮すると周りにある血管は絞られて血液を送り出し、逆に筋肉が収縮しない状態では血液が流れ込む仕組みになっています。よく足を使うことで、流れの弱い血液を心臓に押し戻すことができるのです。
まさしく、足は「第2の心臓」なのです。
よく歩くことで、心臓への負担を軽くすることができ、心筋梗塞、高血圧、動脈硬化などの全身疾患を予防することもできます。
理想的な立ち方は心や体のバランスにつながる?
理想の立ち方は、まず顎を引くことです。そして背筋を伸ばしましょう。
理想の立ち方ができている時、身体には余分な力がかからずしなやかです。
重心の中心点である骨盤に安定感がある。重力に対して、身体が1番楽でニュートラルな状態で、呼吸もゆったりとできるでしょう。
人は、筋肉が十分にゆるみ、重心が安定している時に、心も穏やかでバランスの取れた考えや行動ができるものです。
重力に対して、できるだけ身体をニュートラルにしておく気持ちよさに気付いていただけたらと思います。

生活習慣による身体の癖に気を付ける?

身体が丸まり、顎が飛び出し仙骨が丸まった姿勢だからです。食事の時の姿勢で大切なのは、背筋を伸ばして坐ることと、両足をしっかりと地につけて食べることです。
床をしっかりと踏みしめることで、噛む力を逃がさずにしっかりと噛むことができます。
歯は適度な遊びがあることが大切?
人工物が装着されて、しっかり固定してしまうと、歯そのものも動かないだけでなく、筋膜で動きが連動しません。筋触診しても、そこの部分が動きの妨げてしまっているのです。人工物でがっちり歯列を固めるのは避ける必要があります。歯は適度な遊びがあるからこそ、幅広く身体の変化に対応できるのです。
